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東京証券取引所における市場改革について

東京証券取引所における市場改革が大詰めに迫ってきています。東証1部に属する企業が多くなりすぎてしまったためなどにより、企業の区分の整理を改めて行い、グローバルに機関投資家を呼び込もうという狙いがあるようです。市場改革と共に、コーポレート・ガバナンス改革も段階的に行われていますが、一つの整理が行われることになりそうです。

2013年7月に東証とJASDAQの統合が行われており、当時は、東証の中に、マザーズとJASDAQという所謂、新興市場が併存する形で行われました。

これは、独占禁止法上などの問題をクリアすることもあったのかもしれません。それから、10年程度時間が経過したことから、それらの問題への関心も次第に薄れてきたため、世界の中でスルーされている東京の金融市場を再興させようという本質的な狙いから、市場改革へと向かったと思われます。

東京証券取引所のホームページに記載されている2020年12月末時点の「上場会社数の推移」では、東証1部2,186社、東証2部475社、東証マザーズ 346社、JASDAQスタンダード667社、JASDAQグロース37社、外国会社4社、Tokyo Pro Market37社の合計3,756社となっています。

このうち、今回の市場改革の対象は、東証1部、東証2部、東証マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロースのみで、外国会社とTokyo Pro Marketは対象外となっています。

今後は、2022年4月4日に、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3区分に整理される予定になっています。

2021年7月上旬頃に、プライム市場に該当しないことになる上場会社600社程度に書面での通知が通達された模様です。

そこで今回は、市場改革のポイントについて、説明していきます。

新市場の区分

東京証券取引所が公表している「新市場区分の概要等について」(2020年2月21日)では、流動性、ガバナンス、経営成績・財政状態の3基準として、以下のように整理されています。

プライム市場

多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場

日本のみならず、海外の機関投資家のポートフォリオに組み込まれるような企業価値とコーポレート・ガバナンス体制のある会社であり、SDGsや気候変動リスクなどのように社会との共生も考えた事業活動を行う社会の公器としての役割を理解し、市場とのコミュニケーション・コストを負担できる会社になるものと思われます。

流動性

  • 株主数:800人以上
  • 流通株式数:20,000単位以上
  • 流通株式時価総額:100億円以上
  • 売買代金:時価総額250億円以上

※上場維持基準は1日平均売買代金0.2億円以上

ガバナンス

  • 流通株式比率:35%以上
  • コーポレート・ガバナンス・コード全原則の適用(Comply or Expalin)

経営成績・財政状態

  • 純資産50億円以上かつ、以下のいずれを充たすことが必要
  • 最近2年間の利益合計が25億円以上
  • 売上高100億円以上かつ、時価総額1,000億円以上

スタンダード市場

公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場

流動性

  • 株主数:400人以上
  • 流通株式数:2,000単位以上
  • 流通株式時価総額:10億円以上

ガバナンス

  • 流通株式比率:25%以上
  • コーポレート・ガバナンス・コード全原則の適用(Comply or Expalin)

経営成績・財政状態

  • 純資産額が正かつ、最近1年間の利益が1億円以上

グロース市場

高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ、一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場

事業計画

  • 事業計画が合理的に策定されていること
  • 高い成長可能性を有しているとの判断根拠に関する主幹事証券会社の見解が提出されていること
  • 事業計画及び成長可能性に関する事項が適切に開示され、上場後も継続的に進捗状況が開示される見込みがあること

※上場維持基準として、上場から10年経過後の時価総額が40億円以上とされています。

流動性

  • 株主数:150人以上
  • 流通株式数:1,000単位以上
  • 流通株式時価総額:5億円以上

ガバナンス

  • 流通株式比率:25%以上
  • コーポレート・ガバナンス・コードの基本原則のみを適用(Comply or Expalin)

経営成績・財政状態

  • なし

市場選択の分かれ目

上場会社は、基準に合致すればプライム市場を選択することは可能であり、TOPIX銘柄などのように時価総額が大きく、グローバルな展開を行っている会社については、間違いなく、プライム市場に指定されることになると思われます。現在の東証マザーズやJASDAQに上場する会社については、グロース市場にその多くが指定されるものと思われます。

一方で、プライム市場を選択できるものの、基準ギリギリである場合には、上場維持基準を満たさなくなると、スタンダード市場に変更される場合には、改めて、新規上場と同様の上場審査プロセスを行うことになっているので、メリットとデメリットを考慮して、選択する必要に迫られるかと思われます。

メリット
投資家からの興味や関心を得ることにより、株価上昇の下支えとなること、社員を始めとする利害関係者の満足度を上げることなどが考えられます。
デメリット
規定への要件を充足すること、Annual Reportなどの英語対応、気候変動リスクへの具体的な対応などが考えられます。

独立役員などの規定については、増員して要件を充足することは可能ですが、流通株式に関する取扱いが、金融市場にインパクトを与える可能性があります。流通株式に関する規定を充たすために、株式売却が行われること、株価対策として株主優待制度を廃止し配当を引き上げるといったことが考えられます。株主数の下限が引き下げられたことは要件が緩和されていますが、こちらについては、実務的には影響はあまりないものと考えます。

今回の市場改革では、「現在は上場株式数の10%未満であれば、実態として流通性が乏しいと考えられる株主の保有する株式も流通株式として取り扱っており、流通株式に関する基準が適切に機能していない懸念」があるとされ、

役員や大株主だけなく、『上場株式のうち、「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」の所有する株式については、上場株式数の10%未満を所有する場合であっても、流通株式から除くこととします。』

とあり、従来の取扱いより、厳しい要件となっています。

これにより、市場での株式売却や第三者割当増資、事業法人等との持株解消なども検討されるのではないかと考えられます。流動性の高まりは、短期的には需給バランスの悪化により株価下落の可能性も否定できないものではないかと考えられます。

まとめ

東証市場改革にご興味をお持ちの会社、資産運用を検討されている富裕層の方で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

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