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キャンセルや返品の消費税等に関する経理(会計)処理・仕訳について

店頭では、実物を見て、販売員とのコミュニケーションの中で、商品を購入するので、返品というのはあまり起こらない傾向にあると思いますが、インターネットを通じての商品の購入では、写真と実物の大きさ、色味、イメージが違うなどの理由により、一定程度のキャンセルが発生することがあります。

「先月販売した商品が今月になって返品・キャンセルになった」という月跨ぎの売上高と返品に関する取引について、どのように経理処理すればいいのか迷うといったお話をよく聞きます。

そこで今回は、商品の返品やキャンセルの消費税等(以下、単に「消費税」とする。)に関する経理処理に関して説明していきます。

キャンセル料とは

キャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、解約に伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものとがあります。

解約に伴う事務手数料としてのキャンセル料の消費税

解約手続などの事務を行う役務の提供の対価ですから課税の対象となります。

例えば、航空運賃のキャンセル料などで、解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額は、解約等に伴う事務手数料と言う役務の提供に対するものに該当するため、消費税の課税対象になります。

  • 旅館やホテル、飲食店の予約変更または取消に伴うキャンセル料
  • 土地売買契約の破棄に伴う違約金
  • 携帯電話の解約に伴う違約金
POINT
役務の提供の対価に該当する⇒課税

逸失利益に対する損害賠償金としてのキャンセル料の消費税

本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補填金ですから、資産の譲渡等の対価に該当しないため、消費税の課税対象となりません。


例えば、航空運賃のキャンセル料などで、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるものは、逸失利益等に対する損害賠償金に該当するので課税の対象となりません。

  • 乗車券や航空券などチケットの払戻手数料
  • 投資信託の解約に伴う手数料
  • レンタカーの予約取消に伴う手数料

これらについては、サイトなどの備考欄などに細かな字で記載されているものが多いため、見落としてしまうことも多いかと思います。

POINT
資産の譲渡等の対価に該当しない⇒不課税

事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているキャンセル料の消費税

事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。

これは、不動産の売買契約書において、建物部分(課税)と土地部分(不課税)とが、区分されていない場合に、いくらが妥当なのかという論点がありますが、契約書などにおいて明確に区分してもらうことが必要といえます。

POINT
区別せずに一括で受領⇒不課税

参考:国税庁

前受金をもらっている商品のキャンセル料の仕訳と消費税

事前に商品代金をもらっている場合のキャンセルはどうなるかを考えます。

具体例として、11月1日に出荷を予定している商品にし、8月31日に注文が入り、前受金として同日に3000円を受け取りました。しかし、9月2日にキャンセルの申し出があり、すぐに返金対応したとします。(キャンセル料を1,000円とする)

キャンセル 仕訳の流れ

  • 金銭を8月31日に受け取っている
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金3,000前受金3,000
  • キャンセル確定と返金が9月2日
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前受金2,000預金2,000
前受金 1,000 雑収入1,000

キャンセル料にかかる消費税は、本来受ける予定だった利益を受けられないことに対する損害賠償金であり、消費税のかからない取引となります

返品・注文取消としてのキャンセル

これまで説明してきたキャンセル料をお客さんから取らず、注文(売上)の取り消しを行うケースもよくあるかと思います。そのような場合どのような経理処理がいいのかを考えていきます。

キャンセル仕訳 CASE1

「8月31日に注文が入り、出荷準備をしている間の9月1日にキャンセルが入った」というケースについて考えます。まず売上の認識として、どのような基準を会社としてもういけているかによって変わってきます

受注基準を採用している会社の場合

8月31日の注文は、8月の受注なので8月の売上になります。

キャンセルが9月1日なので9月に8月31日の売上(注文)がなくなるように逆仕訳もしくは、売上返品などの科目で処理をします。

出荷基準を採用している会社の場合

キャンセルを受けた時点で商品を出荷していないので、売上として認識をしません。ですので、帳簿上の処理は不要となります。

※経営的な観点から、会計とは別でキャンセル率等を把握しておくとよいかと思います。

キャンセル仕訳 CASE2

「8月30日に注文が入り、8月31日に出荷し9月1日にキャンセルが入った」というケースについて考えます。

受注基準を採用している会社の場合

8月の受注なので8月の売上になります。

キャンセルが9月1日なので9月に8月30日の売上(注文)がなくなるように逆仕訳もしくは、売上返品などの科目で処理をします。

出荷基準を採用している会社の場合

8月の出荷なので8月の売上になります。

キャンセルが9月1日なので9月に8月31日の売上(注文)がなくなるように逆仕訳もしくは、売上返品などの科目で処理をします。実際にモノが動いているので、在庫の処理も必然的に発生します。出荷時点でモノ(在庫)が減っているか、返品時点でモノ(在庫)が増えているかはしっかり押さえておく必要があります。

まとめ

売上・返品の消費税に関する経理処理について説明してきました。いかかでしたでしょうか。

消費税は、税率が高くなってきていることもあり、法人税等以上に最終的な税金面で大きくかかわってきますので、あまり意識せずに処理をしていた方は、今後、意識してみてください。より詳しく知りたい方は、弊事務所に是非お気軽にお問い合わせください。

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