インターネットを通じて国外事業者のサービスを利用する機会が増えてきていると思います。税制改正が度々行われており、理解しにくく、問題になるのが消費税です。課税なのか、不課税なのか、判断に迷うケースが多くあるかと思います。
そこで今回は、国外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税区分(会計処理)の考え方について、主たるインターネットサービスの具体的事例を用いて説明いたします。
Contents
電子通信利用役務とは、電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供と位置付けられています。
電子通信利用役務の具体例としては、
などが、考えられます。
平成27年4月に消費税法の一部が改正され、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直しが行われました。
結論としては、行われた取引が「国内取引」か「国外取引」に該当するのかの判定基準が、サービスを提供した場所ではなく、サービスを受けた場所が国内外の判定基準になります。
役務の提供を行う者等の住所基準➡役務の提供を受ける者等の住所基準
上記の改正を踏まえた、今現在(令和3年)の電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税の取扱い(判定基準・判定方法)は以下の図のようになります。
これについては、会社の住所(本店)がどこにあるかという判定になります。会社所在地が国外である場合の消費税の取り扱いは不課税取引となります。
この記事を読まれている方は、国内に会社がある方が多いと思います。その場合は次の判定基準に移ります。
そのサービスは「事業者向け電気通信利用役務」なのか「それ以外(消費者)向け電気通信利用役務」なのかの判定になります。
事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものであり、例えば、次のものが該当します。これについては、範囲を狭義に限定的に解釈する必要があります。
〇インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
〇役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの
国内に会社があり、国外事業者が提供している事業者向けではないサービスを利用していた場合、その国外事業者が登録国外事業者であるかということが重要になります。
国外事業者が登録国外事業者であるか否かを調べる方法として、「登録国外事業者名簿」というものがあります。
上記のようなPDFとなっており、ここに名前があるものが登録国外事業者となります。
登録国外事業者名簿
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/touroku.pdf
国外事業者が提供している事業者向けサービスを利用していた場合、課税売上割合によって判定が変わります。
課税売上割合が95%を下回る場合、リバースチャージ方式をとることになりますので注意が必要です。課税売上割合の計算方法は以下になります。
※国内事業者が国外事業者に電子通信利用役務のサービスを利用させる場合は、不課税売上高となり、課税売上割合に影響はありません。
リバースチャージ方式の場合、サービスを提供するもの(国外の事業者)ではなく、サービスの提供を受けるもの(国内の事業者)が消費税を納めることとなります
たとえば課税売上割合が80%で、広告宣伝費が課税売上と非課税売上の共通経費とします。
その場合、控除できる仮払消費税は10,000×80%(課税売上割合)=8000円となり、残りの2,000円は控除できません。一方、仮受消費税10,000は全部納税する必要があるため、以下のような仕訳になります。
広告宣伝費100,000 | 現金100,000 |
仮受消費税等10,000 | 仮払消費税等10,000 |
雑損失(控除対象外消費税等)2,000 | 未払消費税等2,000 |
※課税売上が5億円を超える場合、又は課税売上割合が95%未満の場合は支払った消費税の全額を引くことはできませんので、結果としていくらか納付することになります。
サービス名 | 事業者 | 所在 | 消費税判定 |
Google広告 | Google合同会社 | 国内 | 課税 |
Amazon 出品サービス | アマゾンジャパン合同会社 | 国内 | 課税 |
Amazon 広告サービス | アマゾンジャパン合同会社 | 国内 | 課税 |
上記のように、事業者がそもそも日本の企業としてサービスを提供していることがあります。国内事業者から役務の提供を受ける場合は、単純な国内取引となりますので課税となります。
サービス名 | 所在 | 役務内容 | 登録の有無 | 消費税判定 |
AWS | 国外 | 消費者向け | 登録国外事業者 | 課税 |
Facebook広告 | 国外 | 事業者向け | ― | 不課税 |
Apple | 国外 | 消費者向け | 登録なし | 不課税 |
GitHub | 国外 | 事業者向け | ― | 不課税 |
ZOOM | 国外 | 消費者向け | 登録国外事業者 | 課税 |
Spotify | 国外 | 消費者向け | 登録なし | 不課税 |
Shopify | 国外 | 事業者向け | ― | 不課税 |
サービスの請求書や領収書に「税」と記載がある場合がありますが、今までに紹介してきた判定基準が採用されますのでご注意ください。
電子通信利用役務に関して説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。すこし複雑ですが、判定基準を押さえておくことで、課税なのか、不課税なのか迷うことが少なくなると思います。疑問に思うこと・わからないことがありましたら、お気軽に当事務所にお問い合わせください。