令和2年12月10日に、自由民主党・公明党から、「令和3年度税制改正大綱」が発表されました。2020年は、コロナウィルスにより、経済に大きな影響を与えたため、税収を大幅に増やす政策は少なく、経済活動の維持や成長に向けた政策がいくつか見受けられます。
目次は以下の構成となっており、大幅な修正はないものの、いくつかのトピックスがあります。重要と思われるものをピックアップして記載しており、各項目に(☆→◎→○→△→無)印を付しております。
最終項である「第三 検討事項」では、当年度の税制改正の対象に含まれていないものの、今後の税制改正を占う項目が記載されています。
Contents
①企業のDXを促進する措置等の創設 ☆
デジタル技術を活用した企業変革(DX)
2050年カーボンニュートラル
②活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し ○
控除上限を法人税額の25%から30%に
クラウドサービス等のオープンイノベーション型の対象範囲を拡大
③コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し ☆
④繰越欠損金の控除上限の特例 ☆
投資に応じた範囲内で最大100%までの控除可能に
対象会社株主の譲渡損益に対する課税の繰延措置(減税ではない)
株式と金銭の混合対価も可能
①法人課税
非上場の投資運用業の非同族会社等の役員に対する業績連動給与の損金算入可能に
②相続税
日本に居住する外国人に係る相続等について、外国人が相続人等として取得する国外財産を相続税の課税対象外に △
③個人所得課税
出資持分を有するベンチャーキャピタルのファンドマネージャーなどが出資割合を超えて受け取る組合利益(キャリード・インタレスト)の株式譲渡益等として分離課税の対象となることの明確化 △
①企業のDXを促進する措置の創設 ☆
②研究開発税制の見直し
クラウド環境での自社利用ソフトウウェアの試験研究に要した費用の追加(取得時における投資促進税制との選択適用。重複適用不可) ○
①税務関係書類における押印義務の見直し ○
②電子帳簿等保存制度の見直し等
③地方税務手続のデジタル化の推進
(1)カーボンニュートラルに向けた税制措置の創設 ○
(2)車体課税
(3)経済と寛容の好循環の実現
①中小企業による積極的な設備投資等の支援
中小企業者等に係る軽減税率の特例、中小企業投資促進税制及び中小企業経営強化税制の2年延長 ☆
②地域社会における先進的な設備投資や災害に備える設備投資に対する支援
継続雇用者給与等支給額→雇用者給与等支給額への概念の変更 ○
中小企業による中小企業のM&Aによる株式取得後の準備金の損金算入可能に。中小企業経営強化税制の適用可能となり、所得拡大税制の上乗せ要件に必要な計画の認定が不要に ☆
①地域における移動の利便性向上
②地方の生活を支える自動車の安全性能の向上等
③災害に対するきめ細やかな対応
①個人所得課税における諸控除の見直し
②記帳水準の向上等
③国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置
④セルフメディケーション税制の見直し
①教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し
相続税額の2割加算が適用されないことから節税策として利用されているため、見直しを行い、2年延長
②資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討
相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方の見直し ☆
PE(Permanent Establishment)からの移行
①納税管理人制度の拡充
②国際的徴収回避行為への対応
法人役員等以外についても勤続年数5年以下の短期退職金については、2分の1課税の平準化措置の適用から除外。ただし、退職所得控除後300万円までは、2分の1課税の平準化措置あり。 ☆
①所得税
カジノ所得について、非居住者は課税、居住者は課税
②消費税
カジノに係る売上は不課税。カジノに係る事業に対応する課税仕入れについて仕入税額控除の適用を制限。カジノ関連が5%以下である場合には、仕入税額控除制度の適用可能。
③法人税
不特定多数の者に対する広告宣伝のための割引クーポンの提供は広告宣伝費。賭金額等に応じ一定の基準に基づき行うキャッシュバックは売上割戻し。
1 住宅・土地税制
2 金融・証券税制
3 租税特別措置等
4 その他
(3)退職所得課税の適正化(既述) ☆
(5)特定公益法人等に対する寄附金の寄附金控除及び所得税額の特別について、出資に関する業務に充てることが明らかな寄附金を除外 △
1 国際金融都市に向けた税制上の措置(既述) △
2 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与
非課税限度額1,200(800)万円→1,500(1,000)万円に引き上げ ◎
(2)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与
床面積要件の下限50㎡→40㎡に引下げ ◎
3 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
4 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
5 租税特別措置等
(3)非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例制度
後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員でないときであっても、適用可能。
被相続人が60→70歳未満 + 後継者が特例承認計画の特例後継者として記載される者
6 その他
1 産業競争力の強化に係る措置
(1)デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の創設
取得価額の30%の特別償却か取得価額の3%の税額控除の選択適用 ☆
(2)試験研究を行った場合の税額控除制度
税額控除率の下限6→2%に引き下げ。上限10→14%に引き上げ。 ○
(3)給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度の見直し(既述) ○
(4)繰越欠損金の控除上限の特例の創設(既述)
2 株式対価M&Aを促進するための措置の創設
法人が、会社法の株式交付により、その有する株式を譲渡し、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べる(所得税も同様)
(注1)株式交付親会社の株式か額が80%以上である場合
(注2)株式交付計画書
3 国際金融都市に向けた税制上の措置(既述)
4 民間におけるデジタル化の促進(既述)
5 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
6 中小企業向け投資促進税制等
(1)中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限を2年延長 ☆
(2)中小企業投資促進税制は見直しの上、適用期限を2年延長 ☆
(3)中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は適用期限の到来をもって廃止 ☆
(4)中小企業者等の特定経営力工場設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(中小企業経営強化税制)は、適用期限を2年延長 ☆
7 所得拡大促進税制の見直し
2年延長 ☆
8 中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設 ☆
令和6年3月31日まで間に経営資源集約化措置(仮称)の認定
認定に係る経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)
事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が10億円を超える場合を除く。)
中小企業事業再編投資損失準備金はその事業年度において損金算入
株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入
9 円滑・適正な納税のための環境整備
10 その他の租税特別措置等
11 その他
1 車体課税の見直し
2 租税特別措置等
3 その他
(6)金等の課税仕入れに係る仕入税額控除の要件である消費税法上の本人確認書類のうち、在留カードの写し並びに国内に住所を有しない者の旅券の写し及びその他これらに類する書対をその対象から外す(令和3年10月1日以降) △
1 国際金融都市に向けた税制上の措置
2 クロスボーダー取引に係る利子等の課税の特例等における非課税適用申告書等の電子提出等
3 その他
(1)過大支払利子税制の見直し
①対象外支払利子等の額に、生命保険契約又は損害保険契約に基づいて保険料積立金に繰り入れる予定利子の額、損額保険契約に基づいて払戻積立金に繰り入れる予定利子の額を含める △
②対象純支払利子等の額の計算で、法人が受ける公社債投資信託の収益の分配の額に係る受取利子等相当額を受取利子等の額に加えることができる
(2)過小資本税制の見直し
(1)と同様 △
(3)内国法人が外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額の見直し
①外国子会社合算税制との二重課税調整の対象とされる金額に限る(現行:全額損金算入) △
②外国子会社合算税制との二重課税調整の対象とされない金額に対応する部分につきその適用を認める(現行:全額不適用) △
1 税務関係書類における押印義務の見直し △
2 電子帳簿等保存制度の見直し
3 納税管理人制度の拡充
4 無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の整備
徴収不足が国税の法定納期限の1年前の日以後に滞納者が行った国外財産の無償譲渡等に基因するときは、その無償譲渡等の譲受人等は、第二次納税義務を負う △
5 滞納処分免税罪の適用対象の整備
6 地方税共通納税システムの対象税目の拡大
7 個人住民税の特別徴収税額通知の電子化
8 軽自動車税関係手続のオンライン化
9 その他
(1)スマートフォンを使用とした決済サービスによる納付手続の創設 ○
(2)国外からの納付方法の拡充
(3)e-Taxによる申請等の方法の拡充
(4)処分通知等の電子交付の拡充
(5)クラウド等を利用した支払調書等の提出方法の整備
(6)納税地の移動があった場合における質問検査権の管轄の整備
1 年金課税
各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス
公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例
2 デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化
時価評価課税の有効性課題
多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある具体的方策
3 小規模企業等に係る税制のあり方
個人と法人成り企業に対する課税のバランス
「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方
4 相続等に係る不動産登記の登録免許税のあり方
5 自動車関係諸税
6 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化
7 帳簿等の税務関係書類の電子化
8 税理士制度
9 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減率
10 ガス供給業に係る収入金額による外形標準課税
令和3年度税制改正大綱に関して知っておいていただきたいポイントについて簡単に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。これから起業をご検討している方や法人成りを考えていらっしゃる方、会社が成長ステージに乗ってきて人材の獲得をしていこうと検討している会社で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。