長南会計事務所
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従業員不正と不正をした場合の損失について

場企業の不適切会計の発覚は依然として高水準が続いており、金融庁や東証はガバナンスの向上に向けた指針整備を進められる中、企業側も確実に指針を履行できる体制作りが求められています。

今回は、不正を行った従業員も大きな損失を負うことを理解してもらい、不正へのインセンティブをなくしていくことを目的として、上場企業の不正事例を用いて解説しております。

不正のトライアングル

不正は、以下の3要素が複数揃ったときに生じやすいと考えられています。

機会
・現金やモノがなくなっても誰もきにしない
・一人に権限が集中していて、隠蔽できる、ごまかせる。
・上長が何も確認せずに承認している
動機
・異性関係
・ギャンブル、ハイリスクな投資
・風俗、分不相応な贅沢
・失敗の隠蔽
・業績達成のプレッシャー
正当化
・会社、他人のために仕方なく行う
・報酬、待遇などの不公平感を感じている

不正を行った上場企業の名称と内容

西松建設(プライム)

  • 建設工事の収支悪化を隠蔽するために所長による9億円の不正処理
  • 下請け会社から不適切な接待や利益供与
・機会…プロジェクトの損失を隠蔽しても適時に発見されない
・動機…業績達成のプレッシャー、下請企業からの接待、失敗の隠蔽
・正当化…損失を隠すことが会社のためになる

東レ(プライム)

・取引先に代金を水増し請求させ差額1億円超を着服

・機会…キックバックなので発見されない
・動機…分不相応な贅沢など

グローリー(プライム)

・子会社経理担当の元社員が21億円を着服し、うち17億円は競馬で消費

・機会…子会社経理を任されていたため、着服してもばれない
・動機…ギャンブル

各企業の不正の対応

各企業で行った不正の対応は以下のとおりです。近年は、刑事告訴の他、金額の重要性により従業員が脱税で告訴されるケースもあります。

西松建設(プライム)

  • 下請け企業への精算
  • 元所長が接待費等を下請け企業へ返還

東レ(プライム)

  • 国税当局が着服金を無申告所得として認定
  • 脱税として告訴
  • 東レが懲戒解雇+告訴
  • 大阪府警が背任容疑で逮捕、地検が背任罪で起訴

グローリー(プライム)

  • 元従業員に対して刑事告訴
  • 役員、上席執行役員の辞任、報酬の減額
  • 経営管理体制、内部監査の強化

不正によって引きおこる問題

不正による顛末及び企業・従業員に生じた損失は以下のとおりです

企業側
・特別調査委員会、監査報酬等のコスト増加
・役員の辞任、報酬カット
・違約金の発生
・調査、管理体制強化に伴うリソース増加によるコスト増
・従業員横領については、損害賠償請求の益金計上+重加算税
・上場審査、上場維持に影響
従業員側
・懲戒処分、解雇
・企業から損害賠償請求
・仮に争う場合には、多額の弁護士費用、時間コストの発生
・横領の場合、所得として扱われる+加算税
・調査、管理体制強化に伴うリソース増加によるコスト増
・従業員横領については、損害賠償請求の益金計上+重加算税
・場合によっては、自己破産も

不正を生じさせないために

従業員が不正を行わないように、以下のような対応が望まれます。

  • コンプライアンスに対する意識を高める
  • 横領しても得しないということを意識させる(いつかは必ずばれるので、ばれた場合には損害賠償や訴訟対応等のデメリットの方が大きいということを意識させる)
  • 風通しの良い組織風土(ネガティブな情報を積極的に相談、報告させ、不正の正当性をなくす)
  • 経営管理体制については、事業規模に合わせて適時アップデートし、不正の機会をなくす(見られているということを意識させる)

まとめ

不正を防止するためには管理体制の構築の他、従業員への教育・周知徹底が重要です。会社の健全な継続的な成長、内部統制の充実、社内のモチベーション向上、ガバナンス意識の向上にご興味をお持ちの会社、経営者の方で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。
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