長南会計事務所
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暗号資産の会計・税務処理

ビットコイン(BTC)やイーサリウム(ETH)を始めとする暗号資産は、以前は日本円やUSドルなどの法定通貨と対比する形で仮想通貨と呼ばれ、法的な裏付けのない資産として、流通していました。

しかしながら、仮想通貨の流通量が相当程度の規模となり、静観していた財務省や金融庁もその影響を無視できないことになり、一般投資家保護の観点から、2020年の資金決済法と金融商品取引法改正に伴い、暗号資産として定義付されています。今や、金や小麦といったコモディティ投資商品と同様に、一般投資家だけなく、機関投資家の投資対象となりつつあり、ボラティリティは高いものの、時価総額相当程度の規模となっています。

暗号資産についての税務申告等については、まだ十分に定着されているとは言えず、国税庁も個人で無申告の方や法人での税務・会計処理の誤りについては、特に注視しているところです。伝統的な金融商品である有価証券とも異なり、暗号資産と同様に投資ではなく投機商品とも考えられ、ボラティリティが高いFXとも似て非なるものであることから、多少の混乱や誤解が生じているものと考えられます。また、マネーロンダリングやFATF(Financail Action Task Force)や各国から共通報告基準、通称CRS(Common Reporting Standard)から非居住者の海外での資金移転の状況などを税務当局がキャッチし、調査に乗り出すことも増えてきています。

今回は、暗号資産の税務処理について、個人と法人とに区分し、取得時・保有時・売却時における税務処理について、説明していきます。

暗号資産取引所

暗号資産の歴史はまだ、10年足らずと浅く、アメリカドルや日本円などのある程度安定していると考えらえる法定通貨とは異なりますが、金融庁に届出を行っている取引所があります。先進的な技術であるが故の様々な事件も起こっております。暗号資産交換取引所は、その都度、サイバー攻撃などに耐えられるように、各国の金融庁等と情報連携し、対策を講じており、セキュリティレベルは改善しているものと思われます。

日本における代表的な暗号資産交換取引所は、以下の通りです。会社としての認知度UPと同時に暗号資産の一般投資家への普及のため、デジタルマーケティングだけでなく、テレビCMなどのマスメディアを活用したプロモーションも積極的に行われていることが分かります。ただし、物理的な紙幣を盗む銀行強盗とは異なり、ハッキングなどによる流出金額が一度に多額に及ぶため、従来とは異なるセキュリティ対策が必要となっています。

取引所名 取扱暗号資産数 テレビCMのタレント 流出事件
GMOコイン 20 スギちゃん なし
CoinCheck 18 出川哲郎、松田翔太 2018年1月 580億円
bitFlyer 14 成海璃子、松本人志 なし
DMM bitcoin 14 ローラ なし
BITPOINT 12 新庄剛志 2019年7月 35億円
bitbank 12 なし なし
Zaif 9 剛力彩芽 2018年9月 70億円
LINE BITMAX 6 尾上松也、永山絢斗 なし
日本国内の主な暗号資産取引所

暗号資産取引所で取り扱われる暗号資産

各取引所における取り扱われている暗号資産は、以下の通りです。流通時価総額の高いBTC、ETHは全取引所において取り扱われており、XRP、LTC、BCH、BATも大半の取引所において取り扱われています。一方で、企業独自に発行しているコインやいわゆる草コインでは、取り扱われる取引所が限定されることが見て取れます。

暗号資産流出事件

ブロックチェーン技術を基盤とする先進的な技術であるが故の様々な事件も起こっております。仮想通貨取引所は、その都度、サイバー攻撃などに耐えられるように、各国の金融庁等と情報連携し、対策を講じており、セキュリティレベルは改善しているものと思われます。

世界各地で起こった暗号資産の多額流出事件については、以下の通りです。

暗号資産の黎明期においては、金融機関ではなく、主にIT企業が暗号資産取引所を運営していたことから、セキュリティ対策に対する認識が金融機関と比較して、甘かったのかもしれません。

※MT.GOXは、破産手続が開始されたものの、民事再生手続に切り替わっている。

※CoinCheckは、マネックス証券にアーンアウト条項付の条件により、買収され、業界1位のユーザーを抱えるまでになっています。

暗号資産の関する税務処理(個人)

取得時の処理(個人)

取得金額により、資産として認識

借方 貸方
暗号資産(BTC) 100万円 現金 100万円

 

各年の12月31日時点での処理(個人)

300万円の評価となっている場合・・・税務処理なし

50万円の評価となっている場合・・・税務処理なし

売却時の処理(個人)

取得金額と売却金額の差額を雑所得として認識

借方 貸方
現金 400万円 暗号資産(BTC) 100万円
    雑所得(総合課税) 300万円

※20万円以下の場合には、申告不要の選択も可能

※給与所得などの他の所得と合算して、超過累進税率(5~45%)を乗じて所得税を計算。住民税(10%)の対象にもなります。

※FX(外国為替証拠金取引)における差金決済損益が、分離課税(所得税15%、住民税5%)であり、先物取引に係る雑所得等と損通算できなかった差損の3年繰越ができる点で、扱いは異なっています。

国税庁:累進課税

他の暗号資産と交換

借方 貸方
暗号資産(ETH) 400万円 暗号資産(BTC) 100万円
    雑所得(総合課税) 300万円

※売却時と同様の取扱いとなります。

暗号資産で商品を購入

借方 貸方
商品 363.6万円 暗号資産(BTC) 100万円
仮払消費税等 36.4万円 雑所得(総合課税) 300万円

※一旦、暗号資産(BTC)を400万円の現金とし、次に、それを商品の支払に充てたと2つの取引に考えると分かりやすいかと思います。

暗号資産の関する税務処理(法人)

取得時の処理(法人)

借方 貸方
暗号資産(BTC) 100万円 現金 100万円

 

各決算期期末の処理(法人)

300万円の評価となっている場合

借方 貸方
暗号資産(BTC) 200万円 暗号資産評価益 200万円

50万円の評価となっている場合

借方 貸方
暗号資産評価損 50万円 暗号資産(BTC) 50万円

 

※市場価格のある市場暗号資産についてのみ、時価評価し、法人の所得計算に反映されることになります。

※有価証券のうち、売買目的有価証券と同様に含み益に対して、保有目的とは関係なく、暗号資産に市場価格があれば、課税されることになっています。

※FX(外国為替証拠金取引)における評価損益と同様に、含み損益に課税される仕組みとなっています。

売却時の処理(法人)

取得金額と売却金額の差額を暗号資産売却益として認識

借方 貸方
現金 400万円 暗号資産(BTC) 100万円
    暗号資産売却益 300万円

 

暗号資産は個人で保有すべきか?法人で保有すべきか?

質問として、よく聞かれるのは、暗号資産は個人ですべきか?法人で保有すべきか?ということです。こちらについては、目的や金額の大小により、大きく異なるものと考えられます。

個人的には法人で保有しながら、含み損益課税はCASHがないにもかかわらず、課税されることから、段階的に売却していき、CASHが足らなくなるようにコントロールしていくことが望ましいかと思います。

まとめ

暗号資産にご興味をお持ちの会社、経営者の方で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

※2022年3月16日時点で当会計事務所が把握している情報で記載しておりますが、事実関係や法的、税法的な取扱いの変更もあると思いますので、適宜キャッチアップいただければと思います。

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