長南会計事務所
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税務調査の概要について

(☎プルルルル)お世話になります。私●●税務署、法人●●部門、●●と申します。

先生の関与先の株式会社●●●●様について、法人税及び法人消費税の調査に伺いたいのです。

先方の会社代表者様及び経理ご担当の方と先生との調査候補日を調整いただき、
折り返しお電話を頂きたいのですが、宜しくお願い致します。(☎ガシャ)と事務所に1本の電話が。

これが、税務調査のやり取りの始まりです。

今回は、法人を設立後又は個人事業を開業後、毎年行われる確定申告内容に対し、税法に準拠して適正な申告内容であるかどうかを税務署が会計帳簿などで確認することであり、納税者の皆様が心配になってしまう、税務調査の概要(前編)について説明していきます。

税務調査の目的

会社や経営者や事業主に係る税金である法人税又は所得税等は、申告納税制度といって申告する法人又は個人自ら自社又は個人の所得(≒利益)と税額を計算し、申告と納税の手続を行います。これらが税法に準拠して適正に申告納税されているかを第三者である税務署が確認(調査)をしなければなりません。

税務調査を行うことにより課税の公平性と正確性を担保し、適正な税収を保持することを目的としているのです。大半の会社や個人は脱税の意思がないことは、税務署も理解していますが、少なからず、要るのでしょう。

皆様が俗にいう税務調査とは、国税通則法に基づき納税者の同意のもと国税調査官が 実施するのが任意の調査になります。法の建付けとしては、あくまで任意調査ですが、納税は国民の義務であり、以下の国税の調査権限もあることから、皆様進んで協力くださっているのが現状かと思われます。

国税の調査権限(国税通則法第7章 国税の調査)

税務職員の質問検査権

質問検査権とは、適正公平な課税の確保の観点から、税務職員が各税の納税義務者等に対して質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる権限をいいます(通74の2~74の6)。

1 所得税等に関する調査

(1)質問検査権

国税庁、国税局又は税務署(以下「国税庁等」という。)の当該職員は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の⑵に 掲げる者に質問をし、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる(通74の2)

(2)対象者

① 所得税

(イ) 所得税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は確定損失申告書等提出した者

(ロ) 支払調書又は源泉徴収票、信託の計算書等を提出する義務がある者

(ハ) 上記(イ)の者に金銭若しくは物品の給付についての権利義務がある者又はあったと認められる者

②法人税又は地方法人税

(イ) 法人

(ロ) 上記(イ)の者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡についての権利義務がある者

③ 消費税

(イ) 消費税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は還付を受けるための申告書を提出した者

(ロ) 上記(イ)の者に対し、金銭の支払若しくは資産の譲渡等についての権利義務がある者

 

通74の2~74の6

任意調査とは言え、国税庁等の当該職員(国税調査官)には、国税通則法に基づく権限が与えられていることも知っておくべきかと思われます。

税務調査の時期

税務調査の時期はいつ頃なのだろう?と思う経営者や事業主の方もいるでしょう。

税務調査を実施する時期につき明文化されておりませんので、事業を継続している以上1年を通じて、いつでも税務調査が入る可能性はあります。

ただし、国税調査官の移動時期が通例では7月であることから、新体制が整う8月以降から順次税務調査が実施されることが慣例となっているようです。

大企業などは税務調査の体制は大きく異なりますが、概ね、税務調査官3名(上席国税調査官と国税調査官のタッグとあともう1名で構成)、調査期間3~5日といったところが多いように見受けられます。

税務調査の実施時期などのイメージ

製造業 
決算締月:4月
申告書提出月:6月
調査時期:翌年1月中旬の2日間
※調査官2名
コンサルタント業(過去3期分)
決算締月:6月
申告書提出月:9月
調査時期:翌年4月初旬の3日間
※調査官3名
製品輸出業(過去3期分)
決算締月:9月
申告書提出月:11月
調査時期:翌年3月下旬の3日間(うち、1日は工場ヒアリング)
※調査官3名(うち、国際税務専門官1名)
飲食業(3期分)
決算締月:12月
申告書提出月:翌年2月
調査時期:翌年8月初旬の3日間
※調査官2名
輸入卸売業(3期分)
決算締月:1月
申告書提出月:3月
調査時期:当年7月下旬の2日間
※調査官3名(うち、国際税務専門官1名)

全国の税務署や国税局が新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4月から中止していた新規の訪問税務調査を再開させることが、関係者への取材で分かった。国税側は連休明けの23日から納税者に電話で調査を受けてもらえるかどうか確認し、10月から再開する見通し。

 

(2020年9月22日掲載 日本経済新聞)

(参考)国税HP:国税庁における新型コロナウイルス感染症の感染防止策について 

税務調査の頻度

税務調査は、黒字の会社には定期的に行われ、赤字の会社には何十年も行われないことが多いように見受けられます。その中で、黒字の会社や消費税の還付の会社などについては、優先順位高く、税務調査が行われているのではないかとも考えられます。たとえば、以下のような会社については、要注意かと思われます。

・所得(≒利益)が出ている法人の定期調査(5年周期)
・経営者の代替わりに伴い、役員退職慰労金の支払いが生じた事業年度後の通常調査
・前回の税務調査時に指摘事項があった法人は、税務署内で引き継がれ、次回の調査時に必ず指摘箇所を調査する継続調査(3年周期)
・消費税の還付を受けた輸出業については、定期調査(3年~5年周期)
・国外取引を含む法人⇔国外個人(非居住者)への追跡調査(不定期)
・経営者個人が多額の海外送金を行った場合
・経営者などの富裕層が、居住者から、シンガポール、香港、バージン諸島などの、いわゆる、タックスヘイブンの租税回避地に居住を変え、非居住者となった場合

やはり、お金が多額に動く場合には、より注意が必要と言えます。

まとめ

今回は、税務調査の概要(前編)につき簡易的に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。事業を継続している経営者又は事業主の皆様にとって、切り離せないのが 税務調査(任意)です。税務調査の概要につきご理解をいただいた上で、税務調査の実態・必要書類(後編)については、法人の現場で実際行われているリアルな税務調査内容につき掘り下げていく機会を設けようと思います。

既に会社設立又は個人事業を開業されている方のみならず、これから会社設立又は個人事業開業をご検討されている方もお読みいただければ幸いです。

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