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税務調査時に依頼される資料とその意図について

はじめに

税務調査において、依頼される資料については、各所轄税務署毎に形式は異なるものの、基礎資料と共に、税務否認に繋がる論点に関係するものが多く見受けられます。

これは、税務調査の日程や担当数も限定される中で、効率良く業務を進めていくためのものと考えられます。

税務調査対象会社などについては、税務署が気にしている項目については、より留意して、各年度の決算を行っていくことが望ましいと言えます。

また、税務調査に否認されないための会社経営の一助にもなるので、有効に活用していくことが良いかと思います。

今回は、税務調査時に依頼される資料とそれから読み取れる税務調査の論点を簡単に説明していこうと思います。

税務署からの依頼書面例

ある日、税務署から、「どこそこの会社(以下、「調査対象会社」という)の税務調査を何月頃実施したいのですが・・・」と顧問税理士宛に電話がかかってきます。

それを受けて、顧問税理士と調査対象会社との間で、税務調査のスケジュールの擦り合わせを行い、確定します。

その後すぐに税務署から、国税通則法第74条の2及び第74条の9に基づいて、「税務調査依頼事項」「依頼事項整理表」などと称した書面がFAXされてきます。

これに基づいて、調査対象会社は、税務調査日まで依頼資料を用意することになります。

すべての企業を対象にした依頼される資料

税務署からの依頼される資料のサンプル

番号依頼事項内容部数
1会社案内会社の概要が分かるもの2部
2営業報告書・事業報告書調査対象年度1部
3組織図(役職、人数)、配席図、社員名簿組織、責任者、人員の分かるもの2部
4国内子会社・海外子会社・関連会社一覧表資本関係図2部
5出向者一覧(出向先、出向元)調査対象年度+進行期分1部
6出向契約書・覚書出向内容、給与負担金の分かるもの据置
7取引図、業務・システムフローチャート受注・仕入から売上までの流れが分かるもの1部
8経理処理の流れ図、経理マニュアル、コード一覧経理業務の流れが分かるもの1部
9社内規程現在の規程据置
10稟議書・伺書調査対象年度+進行期分据置
11取締役会議事録。経営会議議事録・各委員会議事録調査対象年度+進行期分据置
12部門別予算管理表・予実対比表・資金繰り表調査対象年度+進行期分据置
13取引先一覧表(住所・口座番号)調査対象年度+進行期分据置
14総勘定元帳・補助元帳調査対象年度+進行期分据置
15会計伝票(見積書・納品書・請求書・領収書・検収書)調査対象年度+進行期分据置
16部門別損益計算書調査対象年度+進行期分据置
17売上台帳・仕掛台帳調査対象年度+進行期分据置
18部門別原価計算書調査対象年度+進行期分据置
19固定資産台帳調査対象年度+進行期分据置
20決算スケジュール・決算修正項目一覧表調査対象年度据置
21期末棚卸資料調査対象年度据置
22法人税申告書・消費税申告書控え税務署は持参しないため据置
23消費税計算資料調査対象年度据置
24監査法人・監査役(会)の監査報告書監査状況の分かる監査調書据置
25源泉所得税関係書類(徴収簿・年調関係・住民税賦課決定)手当・報奨などで源泉・加減算の分かるもの据置
26役員・社員への給与以外の経済的利益各種手当・報奨金等据置
27契約書調査対象年度+進行期分据置

各項目の意図

税務署からの依頼資料を見て、何を調査対象とするのかが分かります。

各項目について、税務署が何を見ているのか?見たいのか?を垣間見ることができます。留意すべき点について、簡単に記載します。

(1)会社案内

申告書からの印象と会社案内からの違和感の有無の確認

(2)営業報告書・事業報告書

申告書からの印象と営業報告書からの違和感の有無の確認

(3)組織図(役職、人数)、配席図、社員名簿

会社のキーマンの確認、架空人件費の有無の確認

(4)国内子会社・海外子会社・関連会社一覧表

グループ会社の確認とそれらの会社との経済合理性のない取引の有無の確認

(5・6)出向者一覧/出向契約書・覚書

架空人件費の有無の確認、出向に関する税務上(法人税、消費税)の取扱い

(7)取引図、業務・システムフローチャート

主たる取引の確認、決算データの取り込みの確認

(8)経理処理の流れ図

経理処理の流れの確認、違和感のあるコードの設定の有無の確認

(9)社内規程

違和感のあったり、課税上問題となりやすい規程の確認

(10)稟議書・伺書

特定者の決裁、バックデート、コメントや付箋など違和感のある稟議の確認

(11)取締役会議事録

重要項目に係るコメントなど違和感のある項目の確認

(12)部門別予算管理表

予算と実績の乖離が法人所得に与える影響の確認

※実績が上振れした場合には、経費を追加計上していく傾向があるかを見ています。

(13)取引先一覧表

調査対象会社と親密又は違和感のある相手先の確認

※貸し借りなど、やりやすい相手先を特定されることもあります。

(14・15)総勘定元帳/会計伝票

税務調査の基礎となる資料であり、特定者の費消や摘要や課税区分や付箋の確認

(16)部門別損益計算書

税務調査の基礎となる資料であり、粗利益率や販管費の概要の確認

(17・18)売上台帳/部門別原価計算書

売上の期間帰属のカットオフエラー、赤字案件の有無、原価計算の適正性の確認

(19)固定資産台帳

固定資産の実在性、取得や除却のタイミングの確認、減価償却計算の妥当性の検討取得が早すぎるカットオフや不動産売買の有効性が論点になることが多いです。

(20)決算スケジュール

決算スケジュールがタイト又は遅延しているか?決算修正で違和感のあるものの確認

※請求書をいつまで待って会計処理しているかの確認をしています。

(21)期末棚卸資料

棚卸手続の適正性、簿外在庫の有無の確認

(22)法人税申告書

税務調査の基礎資料、コメントや付箋の確認

※付箋は処理に悩んだことを意味することが多く、税務調査でも見られます。

(23)消費税計算資料

消費税課税区分コードの確認

※大局から違和感のある区分を発見して、詳細に落とし込む傾向にあります。

(24)監査報告書

監査での指摘事項からの税務否認項目や不正による重加算税事例の有無の確認

※役員など重要人物の不正は重加算税とすることが多いです。

(25)源泉所得税関係書類

源泉徴収対象、現金支給などの源泉徴収漏れの確認

※工場や倉庫で外部の方に業務委託している場合の指揮命令系統を見ています。

(26)役員・社員への給与以外の経済的利益

報奨金等の源泉の有無、役員への現金支給など税務否認項目の確認

(27)契約書

当初の税務調査項目にはないものの印紙税の確認、違和感のある契約書の確認

その他個別に依頼される資料

その他個別依頼資料については、各税務調査官により異なりますが、一般的な会社では採用されていない会計処理や勘定科目がある場合には、調査対象となることが多いです。

特に、研究開発減税や所得拡大税制などについては、毎年、摘要要件が変更になったり、間違いが多く、税務否認しやすい項目であり、ダイレクトに税額に影響するため、必ず確認されます。

まとめ

税務調査時に依頼される資料とその意図について簡単に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

会社の経営を透明化されたい経営者の方や会社、税務調査で否認されたくない経営者や会社の方で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

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