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通勤手当の課税・非課税について

年末調整や確定申告の時期になると、ネット上で、「通勤手当は非課税」や「通勤費は非課税」というワードを見かけるようになります。

2023年10月にインボイス制度が始まり、会計処理をする際に、消費税の区分を入力しなくてはいけなくなりました。通勤費について、消費税を『課税区分』で入力していいのか、『非課税区分』で入力するのか混乱してしまう方もいらっしゃるようです。

そこで、今回は、旅費交通費の中でも通勤手当・通勤費について、記載したいと思います。

二面性のある通勤費

通勤費には、以下の二面性があります。

[A]

対象税目:源泉所得税

概要:役員や使用人などの給与所得者に通常の給与に加算して支給する通勤手当や通勤定期券などは一定の限度額まで非課税となっています。電車やバスなどの交通機関だけを利用している人と交通機関のほかにマイカーや自転車なども使っている人の通勤手当などの非課税となる限度額については以下のとおりです。

国税庁HP No,2582 電車・バス通勤者の通勤手当

[B]

対象税目:消費税

概要:国内の出張または転勤のために、役員または使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。

ただし、海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。

また、事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期券等の現物による支給を含む)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れになります。

国税庁HP No,6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い

通勤に使用するのは、電車・バスの他にマイカーでの通勤、電車通勤でも新幹線の利用等、様々な形態があり、限度額が定められている場合もあります。

今回は、一般的な限度額内の電車・バスでの通勤について比較していきたいと思います。

まず、[A]の場合は、対象税目が『源泉所得税』となっており、『非課税』と記載されています。

次に、[B]の場合は、対象税目が『消費税』となっており、こちらは『課税仕入』と記載されています。

〔A〕と〔B〕は、まったく真逆の記載となっておりますが、これは対象税目にもあります《税法上》の取扱いの違いになっています。

通勤手当の非課税と課税の違い

[A]の「源泉所得税」とは、個人が、その年に得た収入(給与所得や雑所得、不動産所得等)に対して計算される税金になります。

仮に、収入に通勤費を含めて「源泉所得税」を計算すると、その年に得た収入が通勤費分が増えるので、結果として、納める「源泉所得税」も増加いたします。

「源泉所得税」法上の『非課税』とは、個人が支払う「源泉所得税」の計算をするときに、受け取った通勤費を含めなくて良い。ということになります。

※通勤費が非課税となる金額には、上限がありますので、注意が必要です。

[B]の「消費税」とは、主に法人や、個人事業主として消費税を納税・還付されている方に関係してきます。

個人は物品等を購入した際に、消費税を含めて支払っていますが、消費税を単独で計算して納税・還付することが無いためです。法人や個人事業主としての通勤費とは、従業員が仕事をするために必要な経費を、個人へ支払っていることになります。

個人を通過して、交通費(電車代・バス代など)を支払っているともいえます。

このため、法人や個人事業主側から見ると、通勤費は課税対象(課税仕入)となります。

※こちらは、通勤費として計上した金額が、全額、課税対象となります。

通勤費の課税一覧表

一覧にすると以下のようになります。

対象消費税区分上限関係する税目
個人非課税あり所得税法
法人 個人事業主課税なし消費税法

個人の収入として計算する場合は、非課税。法人として支払う場合は、課税。

経理処理をしていると、このような二面性をよく見かけます。誰が受け取るか、誰が支払うのかなど、主体を明確にしておく事が必要かと思います。

まとめ

通勤費について知っておいていただきたいポイントについて簡単に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。様々な会計・税務についてご相談などを御持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

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