長南会計事務所
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減価償却について②

今回は前回に引き続き、減価償却について説明していきます。前回、法人税法上で減価償却費の計上については、一定の規制があると申し上げましたが、お読みになった方の中には、

「機械の法定耐用年数が15年? 償却が終わるまでは、とてもたない」

「耐用年数で投資資金の回収とかしていたら、会社が倒産するよ」

「投資の回収計画と税務上の償却額が食い違いすぎる」

というお気持ちになった方も多いかもしれません。今回はそのお気持ちに対しまして、減価償却と税の関係を中心に説明していきたいと思います。

前回記事はこちら「減価償却について①」

税務上の減価償却

税務上の減価償却の規制の方法としては、

  1. 法定耐用年数
  2. 償却費の計算方法

の2つがあります。このうち1.の法定償却年数に関しては前回ご説明した通りです。次に2.の償却費の計算方法ですが、現在税制上資産の種類によって、次のように償却方法が指定されています。

資産区分法定の償却方法
建物・建物付属設備・構築物定額法
機械・車両運搬具・什器備品・工具定率法

税務上の償却費と財務諸表上の償却費との関係

税務上で償却費の計算額は規定されているわけですが、会計上、つまり財務諸表に計上する償却費は税務上の計算と違っていてもいいんでしょうか?

「それが、いいんです!!」

ここで冒頭のお話を思い出してください。購入した資産は、動くうちは、ガンガン働いてもらって利益をもたらしてほしいですよね。

でもその結果、法定耐用年数まで持たないかもしれない・・・。

しかしながら、法定耐用年数までもつような細く長くのような使い方をした場合には、収益は上手くあがらず、会社は潰れてしまうかもしれません。
反対に、稼働率が高ければ、購入した資産の元手は、法定耐用年数よりもっと早く回収できるかもしれません。

実際に資産が使用不能になるタイミング、購入した資産の原価を回収できるタイミングが、税務上の法定耐用年数とぴったり一致することはまずあり得ません。ですので、会計上の減価償却費の計算は、税務上の償却費計算方法に必ずしも従う必要はないのです。

では、税務を度外視した場合、会計上の減価償却は自由にやってよい?

「そんなことはありません!!」

確かに償却費は自由に設定できますが、そこには収益計画など確かなロジックが必要となります。特に上場を目指す場合など、毎年ルールが変更されて、意図的に利益操作するような、あやふやなやり方では、公認会計士の監査に耐えることはできません。

余談ですが、自動車産業のスズキ株式会社の鈴木修会長は、「生産設備を平均3年で償却する」と豪語していたそうです。これは毎年計上される償却費が多大となり、黒字を維持するためのハードルが上がることを意味しています。それが可能であるとのロジックと、やり遂げなければならないという真摯さが感じられるエピソードです。

しかしながら、多くの中小企業では、次に記載する差額計算の手間などから法定の償却年数と計算方式を用いていることを多く見受けます。

税法とは違う方法で減価償却をしたら?

では、税務上の償却費と異なる計算で減価償却を行った場合の処理はどのようになるでしょうか。

税務上の減価償却費>財務諸表上の償却費
財務上も税務上も追加の処理の必要なし。
税務上の減価償却費<財務諸表上の償却費
税務上の利益(所得)の計算で、財務諸表上の減価償却額と税務上の計算額との差額は、経費として認めない。

つまり、財務諸表上で少ない減価償却費を計上しても、法人税を計算するときには税務上の計算額まで追加することはできず、逆に財務諸表上で多額に計上した際には差額を利益に加算されてしまうということです。

会計上の減価償却方法で税務上も減価償却するには?

①償却年数を変更する

法定耐用年数より短い期間で税務上も償却したい場合には、一定の制限はありますが、

管轄の国税局長の承認のもとに短縮した償却年数を用いることもできます。

(法人税法施行令第57条第2項、第155条の6、法人税法施行規則第17条、第37条)

具体的には、「耐用年数の短縮制度」というものがあり、「耐用年数の短縮の承認申請書」を提出します。

参考:国税庁HP

申請するためにクリアすべき要件としては

  1. 当該資産が、法令で定められた短縮事由のいずれかの事由に該当すること。
  2. 当該資産の使用可能期間が法定耐用年数よりおおむね10%以上短くなること
  3. 耐用年数の短縮の承認申請書を納税地の所轄税務署長を経由して所轄国税局長に提出し、所各国税局長より承認を受けること。

となります。

また、1.の「法令で定められた短縮事由」としては

  1. 種類及び構造を同じくする他の減価償却資産の通常の材質又は製作方法と著しく異なること。
  2. その資産の存する地盤が隆起又は沈下したこと。
  3. その資産が陳腐化したこと。
  4. その資産がその使用される場所の状況に起因して著しく損耗したこと
  5. その資産が通常の修理又は手入れをしなかったことに起因して著しく損耗したこと
  6. 同一種類の他の減価償却資産の通常の構成と著しく異なること
  7. その資産が機械及び装置で、耐用年数省令別表第二に特掲された設備以外のものであること
  8. その他上記①~⑦に準ずる事由

が法令で挙げられております。 

実際に短縮した耐用年数が適用されるのは、承認を受けた日の属する事業年度からとなります。ここで、気を付けたいのは、承認者が国税局長(通常の税務申請手続きは管轄の税務署長決裁である場合が多いです)であり、承認までに日数を必要とするので、決算日間近に申請すると、承認が翌期となってしまいます。適用することを考える場合、遅くとも第3四半期が終わる時点までには提出しておきたい所です。

②減価償却の計算方法を変更する

次に税法上で指定された償却方法以外の計算方法を税務上も使用したい場合はどうでしょうか。

昨今、グローバル企業を中心にIFRS(国際財務報告基準)に基づいて、財務諸表を作成する企業が増加しております。IFRSでは償却方法について「資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなくてはならない」とされています。そのため、定率法が否定されているわけではないのですが、ロジックとして説明しやすい定額法を適用する場合が多いようです。

このような時、税法上で定率法を適用すると定められている資産があると、毎期の償却方法の違いによる差額の管理が煩雑になります。

そのため、税法では申請手続により償却方法を、財務諸表上の方法と合わせることを認めています。

これは「減価償却資産の償却方法の届出」という制度で、「耐用年数の短縮の承認申請書」と違って、期限内に提出すればその期から適用することが可能となります。(法人税法施行令第51条第2項、第155条の6、第188条第8項)

参考:国税庁HP

ただし、会社の状況(設立時、事業所の新設など)によって期限が定められていますので、
遅れることなく提出いただければと思います。

まとめ

今回は減価償却の会計上の計算と税務上の計算の違いを中心に、簡単に説明してきましたがいかがでしょうか。

確かに税法上の縛りはありますが、諸々の手続きをすることにより、収益計画とリンクした戦略的な減価償却が可能となります。

次回は少額償却資産、特別償却など、減価償却の税務上の特例をご説明したいと思います。

今後設備投資を計画中、既存設備の償却方法を見直してみたいなど、課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

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