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企業版ふるさと納税

個人が行う「ふるさと納税:は、税の控除があり、更に返礼品があることで知られていますが、法人にも「企業版ふるさと納税」があります。平成28年から始まり、正式な名称は「地方創生応援税制」と言います。

個人のふるさと納税とは違い、返礼品はありませんが、税制上の優遇措置である税額控除があり、その税額控除について2020年に大幅な見直しがありました。今回は企業版ふるさと納税について説明したいと思います。

企業版ふるさと納税の概要

企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、現行制度では寄附金の損金算入による国税と地方税の税額軽減として約3割、企業版ふるさと納税の税額控除措置として寄附金の最大約3割、合わせて寄附金の最大約6割の税金が軽減されていましたが、2020年の改正により、税額軽減はそのまま維持され、税額控除措置が最大3割から最大6割に引き上げられました。したがって、改正後では寄附金の最大約9割が軽減されます。

現行制度同様、改正後でも税額控除に上限金額が設けられているため、全てが寄附金の最大約9割の軽減を受けられるわけではありませんが、法人の負担が実質1割となる場合があります。

なお、税額控除は、法人で課税所得が生じた場合に可能となるもので、法人決算が赤字の場合や法人決算が単年度では黒字でも、繰越欠損金がある場合などにより課税所得が0の場合には適用できないことになっています。

企業版ふるさと納税の税額控除の仕組み

改正後は、2020年4年1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 現行(3割)改正後(6割)
法人住民税寄附額の3割寄附額の4割
法人税法人住民税で2割に達しない場合その残額。ただし寄附額の1割を限度とする。法人住民税で4割に達しない場合その残額。ただし寄附額の1割を限度。
法人事業税寄附額の1割寄附額の2割

※納税額に対する各税目の控除額の上限

法人住民税
法人住民税法人税割額の20%が上限
法人税
法人税額の5%が上限
法人事業税
法人事業税額の20%が上限

企業版ふるさと納税の留意点

企業版ふるさと納税の留意点としては、以下のものが考えられます。

  • 寄附対象が内閣府に認定されたものであること
  • 1回当たり10万円以上の寄附であること
  • 寄附を行うことの代償として、直接的な経済的な利益を受けていないこと
  • 本店が所在する地方公共団体への寄附ではないこと
  • 地方交付税の不交付団体である都道府県など一部の自治体は対象外

企業版ふるさと納税を検討される企業においては、内閣府に認定された寄付金であることを確認すること、本店所在地への寄附では反対給付と考えられることから排除されていること、本店所在地以外での寄附金は認められるので事業を展開している場合などでは副次的に企業イメージがアップするなどの効果があり得ることを総合的に考えられても良いかと思います。

改正後の概算自己負担額

税額控除に上限があるため、全てが実質自己負担1割となるわけではありません。そこで、自己負担額を最小とするためには詳細な計算が必要ですが、事例をいくつか挙げておきます。

<前提条件>
資本金:1億円以下
法人税課税所得:1,000万円
(東京都の普通法人)

寄附金額が10万円の場合

9万円の税額軽減の効果があり、実質自己負担額1割の1万円となります。

寄附金額が20万円の場合

約15万円の税額軽減の効果があり、実質自己負担額25%の5万円となります。

企業版ふるさと納税のメリット

企業版ふるさと納税を活用するメリットは、以下のようなものが挙げられます。

  • 企業の社会貢献とPRによる知名度の向上
  • 地方公共団体との円滑な関係の構築
  • 自己負担が少なく節税効果がある
  • 企業が共感する地方創生プロジェクトに税金の使途として選択が可能となる

企業版ふるさと納税の寄附実績

 平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
寄附件数517件1,254件1,359件1,327件
寄附額747百万円2,355百万円3,475百万円3,380百万円

企業版ふるさと納税の寄附実績は、上記の通りですが、施行初期は件数、寄附額と共に増加傾向が見られたものの、平成30年度、2019年度と頭打ちとなっています。

今回の税制改正で、税額控除が大幅に引き上げられ、更に自治体の認定手続きが簡素化されたことから、企業版ふるさと納税の利用が進むと期待されています。

まとめ

今回は企業版ふるさと納税を説明いたしました。「地方創生」はよく聞く言葉ですが、内容はいまひとつピンときませんし、どのようなことが地域創生につながるのかもよく分かりません。

しかしながら、2020年の税制改正により、「企業版ふるさと納税」が活用しやすくなったのは事実ですので、これを機会に興味を持つのも良いのではないでしょうか。地方公共団体の地方創生プロジェクトは、企業版ふるさと納税ポータルサイトで検索でき、各地方公共団体のホームページに載っている場合があります。

なお、2020年8月の認定により地域再生計画は全国に776件もあります。 

もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問合わせください。

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