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業務管理契約はココに気を付ける

企業を経営していくうえで、正社員だけでは足りない量的・専門的なリソースを、第三者にアウトソーシングするケースがあります。

特に、量的なリソースは不足しているもの、正社員としてフルコミットで採用する程までは必要としていない場合や第三者の専門的な知識や経験を利用したい場合などで利用するケースが多いと考えられます。

この場合、合理的な金額で締結することはもちろんのこと、契約書で業務内容や責任範囲などを明確にしておかないと、後々のトラブルにもつながる可能性があります。

今回は、業務管理契約を提携する際に気を付けるべきポイントについて、解説していきます。

業務管理の取り扱い

経理・人事・総務業務など

ここでは、企業活動をしていくうえで必要な業務管理について、主に人事・経理・総務業務などについて説明していきます。

税理士事務所や社会保険労務士事務所等に依頼する場合には、業務管理料や報酬について問題になることは通常ほとんどありません。

しかしながら、業務管理を親会社やグループ企業に委託する際には特にですが、第三者であっても、料金の経済合理性や妥当性について留意する必要があります。

親会社やグループ会社に委託することのメリット

業務管理を1社にその業務に集約させて委託することは、グループ全体として、専門知識が集約すると共に業務効率が向上し、結果としてコスト削減につながります。

単独の1社だけでは、繁忙期や月次の忙しいタイミングに合わせて多めに社員を採用すると、どうしても閑散期に余剰が発生してしまいます。

これを、親会社に委託したり、グループ企業のシェアードサービスに委託したりすることで、平準化することが可能です。

また、1社の少ない管理部員で経理・人事・総務・法務等をこなすより、親会社やシェアードサービスで専門の部署が業務を行うことで、効率化が可能となります。

また、ERPなどを共通化することで、グループ経営管理も効率的効果的に実施可能になります。

業務管理料の取り扱いについて

グループ会社間や利害関係者間での業務管理契約については、業務内容を明確にしたうえで、合理的な金額を決定し、計算根拠を残した上で料金を決定し、契約書を作成する必要があります。

具体的には以下のとおりです。

契約内容について

人事業務であれば、給与計算・社会保険手続・年末調整等、経理業務であれば、記帳・月次決算・決算・連結決算等の業務内容を契約書上で明確にする。

親会社に委託する場合

親会社の人件費のうち、上述の業務割合に応じて、金額を決定する。

例えば、親会社の管理部員の人件費が100万円/人月とした場合、1割程度を子会社の管理業務に費やしている場合には、10万円とするなどです。

この場合、会社の規模や金額の大小に応じて、税務調査の際に論点となる可能性がありますので、業務量の根拠(ある時点で、担当者がどの程度の時間を要しているか)を残しておき、担当者の給料や業務量が大幅に変更にならない限りにおいては、3年に1回程、業務量の調査をしておき、業務量のエビデンスを残しておけば、税務調査において問題となるリスクは低いと考えます。

立替金相当なのか、利益を上乗せした形なのかにより、税務調査で消費税等の取扱いの議論に発展する可能性があります。

持株会社やシェードサービスに委託する場合

それ自体が事業となりますので、原価相当だけではなく、それに利益を上乗せすることが一般的です。

例えば、管理業務に係るコストの費目を決めておき(人件費・家賃・減価償却費等)、当該費用合計の1割×1.1(10%のマージンを計上)とする方法です。委託する企業よりも、持株会社やシェードサービス側で論点となる可能性があります。

税務調査においては、国際課税の論点と同様に、独立企業間での取引価格を参考にするなどの議論が行われる可能性がありますが、一定のマージンを上乗せしておくことが必要と考えられます。

少し別の論点となりますが、EU国外関連者から日本親会社への商品の貿易取引に際し、利益率などは、EUの税制を鑑みた利益率や業務内容などにより、数パーセントと前回税務調査と同様に行っていたものの、EU国外関連者との通関作業などの業務管理を親会社が契約書がなく行っていたため、否認されて事例もあるようです。

【参考】株式上場を目指す場合

株式上場を目指す企業の場合、総務・人事・経理機能は基本的には内製化が求められます。

特に、親会社やグループ企業への業務管理の委託は、独立性の観点からNGとなる可能性があります。

一方、給与計算を社労士等に外注したり、経理業務について基本的には内製化したうえで、税務計算を外注したりすることは認められると考えます。

その場合でも説明責任は企業にありますので、意思決定やチェック機能は企業で有する必要があります。

総務・人事・経理とは違いますが、内部監査の一部をアウトソーシングすることも可能です。

ただし、丸投げはできず、企業内で主体的な関与(内部監査計画の策定や業務委託先が実施した内部監査報告の評価を主体的に実施すること)が必要となります。

会社の規模やステージ、コストベネフィットを考慮して、効果的効率的に外部リソースを利用することが有効です。

【追補】業務管理を委託する先の能力について

上場企業で、連結決算をグループ企業に委託していたものの、当該グループ企業で連結決算を行うリソースが不足し、上場企業にも専任の経理担当役員がいないこと等を起因として、不適正開示を行い東証に改善報告書を提出したケースもあります(「KYCOMホールディングス株式会社 改善報告書」参考 2013083001.pdf (kyd.co.jp))。

上場を目指す企業や上場企業においては、管理業務の一部をアウトソーシングしたとしても、それらをチェックしたり評価したりするリソースは必要と考えます。

まとめ

業務管理契約についてご説明させて頂きました。特に親会社、グループ会社、特別利害関係者との契約については、税務上、論点となる可能性がありますので、課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当事務所へお問い合わせください。

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