長南会計事務所
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IPO(主幹事証券会社、監査法人、証券代行、支援会社)

ベンチャー企業が成長軌道に乗り、借入金等で資金調達してきたものの、更なる株式による資金調達や知名度向上を企図して、東京証券取引所などに株式を上場することをIPO(Initial Public Offering。アイ・ピー・オー。)と呼びます。この時、どんな上場基準なのか、どんなスケジュールなのか、どんなことをすればいいのか、どんなプレイヤーがいるのか、など分からないことだらけの方がいらっしゃるのではないでしょうか?そこで今回は、IPOにはどんなプレイヤーがいるのかについて説明していきます。

IPOの主体はあくまで上場申請予定会社であるベンチャー企業

 

IPOのプレイヤーは、上場申請予定会社を中心に、必須となる、主幹事証券会社(IPO時には、複数の証券会社で幹事団を組成する)、監査法人、証券代行業務を担う株主名簿管理人となる信託銀行等、印刷会社があり、必須ではないものの、上場申請予定会社を支援するプレイヤーとして、会計事務所、弁護士事務所、書類作成支援会社などがあります。

IPOの主体はあくまで上場申請予定会社である企業ですが、その他のプレイヤーについて、具体的にはどのような会社などが存在するのか、見ていきたいと思います。

 

主幹事証券会社

日本証券業協会のホームページによると、証券会社は250~300社程度あるとされています。しかし、ここ数年を見ると、上場申請予定会社の公開引受、引受審査などを担う主幹事証券会社は特定の証券会社に集中しています。主たる主幹事証券会社の特徴は以下の通りです。

 

証券会社名

IPO実績
2019年
2018年

規模感

備考

SMBC 日興証券

-20社-(1位)
-19社-(3位)

銀行との協力関係

大和証券

-20社-(1位)
-11社-(4位)

バランス力

野村證券

-17社-(3位)
-23社-(1位)

中・大

審査能力

みずほ証券

-12社-(4位)
-22社-(2位)

小・中

銀行との
協力関係

SBI証券

-6社-  (5位)
-10社-(5位)

ITネット
個人投資家

三菱UFJ
モルガン
・スタンレー
証券

-4社-  (6位)
-5社-  (6位)

大 海外案件

海外の機関
投資家との
パイプ

東海東京証券

-4社-  (6位)
-1社-  (7位)

小 地方案件

 

エイチ・エス
証券

-2社-  (7位)
-0社-  (-位)

IPO再開

いちよし証券

-1社-  (8位)
-1社-  (7位)

堅実

藍澤証券

-1社-  (8位)
-1社-  (7位)

 

岡三証券

-0社-  (-位)
-1社-  (7位)

 

東洋証券

-0社-  (-位)
-0社-  (-位)

特徴のある
会社多い

合計

86社
90社

   

※IPO実績は重複している場合は、それぞれ1社としています。
※全=小・中・大(以下、同様)

主幹事証券会社選定のポイントは、IPO実績があることが大前提となりますが、

  • 上場申請会社のビジネスを理解していること
  • 証券会社内で応援してくれる担当者の熱意
  • 引受チームのバランス
  • 社内をまとめ上げ応援してくれるパワーがある役員を巻き込むこと

が重要となり、責任者や担当者をバイネームで依頼することも良いかと思います。

東京証券取引所等に上場申請し、審査が終了し、上場承認が下りる頃になると、IPO時の公募増資などの株価が最大の論点になります。ここで、話し合っても、双方にとって落としどころが見えず、しこりが残ることがあります。主幹事証券会社の選定は、IPOの2~3年前ですが、3~5社程度でビューティコンテストを行う時に、類似会社の選定、PERやPSRなどのバリエーションの考え方を擦り合わせ、目線を合わせておくことが必要と思います。

※ここでいう、ビューティコンテストとは、複数の主幹事証券会社候補からIPOに関する様々な提案を受け、自社にフィットとする主幹事証券会社を選定する手続を言います。

監査法人

日本公認会計士協会のホームページによると、監査法人は250社程度あるとされています。しかし、ここ数年を見ると、上場申請予定会社の監査法人は特定の監査法人に集中しています。主たる監査法人の特徴は以下の通りです。

監査法人名

IPO実績
2019年
2018年

規模感

備考

EY新日本有限責任監査法人

22社(1位)
29社(1位)

最近IPOに注力監査メイン

有限責任監査法人トーマツ

21社(2位)
21社(3位)

中・大

ベンチャー支援 コンサル色

有限責任あずさ監査法人

19社(3位)
25社(2位)

長年IPOに注力

太陽有限責任監査法人

8社(4位)
7社(4位)

小・中

バランス力

PwCあらた有限責任監査法人

5社(5位)
3社(5位)

中・大 海外案件

 

BDO三優監査法人

4社(6位)
1社(6位)

小・中

 

監査法人 A&Aパートナーズ

2社(7位)
1社(7位)

 

仰星監査法人

2社(7位)
0社(-位)

 

PwC京都監査法人

1社(9位)
1社(8位)

 

海南監査法人

1社(9位)
0社(-位)

 

有限責任大有監査法人

1社(9位)
0社(-位)

 
合計 86社
90社
   

監査法人選定のポイントは、IPO実績があることが大前提となりますが、

  • 上場申請会社のビジネスを理解していること
  • 監査担当者の熱意とIPOの経験
  • 監査チームのバランス
  • 社内での説明能力あるパートナーを巻き込むこと

が重要となり、責任者や担当者をバイネームで依頼することも良いかと思います。

大手監査法人に集中する傾向に変わりはありませんが、IPO難民等と言う言葉が10~15年タームで発生しているので、その時には、一時的に新たな監査法人が発生してくることもあります。

2020年10月時点では、IPO候補先とその業務を担う監査法人の残業問題や人材流出などによるマンパワー等の需給バランスにより、監査法人側でIPOを受けにくい状況に陥っており、一部社会問題となっているようです。

監査法人が異なることにより、会社の評価や時価総額が変わることはないかもしれませんが、会社の成長ステージに応じて、自社にフィットする監査法人への変更を検討する又は検討せざるを得ない上場会社等も多くなったように感じます。

証券代行業務を担う株主名簿管理人

証券代行業務を行っている主たる会社は、メガバンク系を中心に、以下の通りです。

業務範囲が特化されているため、人材などのソフト面以外に差はあまりないものと思います。

三菱UFJ信託銀行
三井住友信託銀行
みずほ信託銀行
日本証券代行
東京証券代行

印刷会社

有価証券報告書の作成を行っている主たる会社は、以下の2社の寡占状態となっています。

以前は紙媒体での作成及び提出でしたが、EDINETでの提出となっているため、記載要領、有価証券報告書のチェック体制、株主総会等の指導体制で差別化が行われています。

業務範囲が特化しているものの、システムのアップデート、人材などのソフト面、書類支援体制に特徴が表れていると思います。

宝印刷株式会社
株式会社プロネクサス
https://www.pronexus.co.jp/

※株式会社プロネクサスは、2006年10月に亜細亜証券印刷株式会社から社名変更しています。

書類作成支援会社

上場申請予定会社の有価証券報告書や主幹事証券会社や東京証券取引所等の審査書類等の書類作成支援会社は、個人を含めると数多ありますが、組織化して行っている会社は、以下の通りです。

経験がある方が担当者となるか、チームのバランスや個人の能力がIPOまで事故なく、最短コースでいけるかの命運を握ります。

株式会社タスク

※宝印刷株式会社の子会社

株式会社 AGSコンサルティング
http://www.agsc.co.jp/businesscat/ipo/

まとめ

IPOしようとする時に知っておいていただきたいポイントについて簡単に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。IPOを経験している方は限られ、経験したと言っても、本当?と思う方も多く見受けられます。

また、採用となった場合に、入社後にトラブルとなるケースも多いです。これについては、業界内での評判を汲み取って判断していくことが近道だと考えられます。IPOに関してやるべきことをスタート時点で把握し、スケジュール全体を俯瞰することにより、管理し、最短で、余計な労力や時間がかけることなく、また、事故なく、スムーズな気持ちの良いIPOを考えていらっしゃる経営者で課題をお持ちの方・もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問い合わせください。

 

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