日本には、多くの富裕層の方がいらっしゃいますが、
と言われ、合計で150万世帯いると言われています。
※出典:野村総合研究所、国税庁「国税庁統計年報書」、総務省「全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」、厚生労働省「人口動態調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、東証 「TOPIX」 および「NRI生活者1万人アンケート調査」、「NRI富裕層アンケート調査」等よりNRI推計)
これらの方は、
など様々いらっしゃいます。
このような方々から、
「何か良い資産運用はないでしょうか?」
「確定申告すると多額の税金を納税していていやだ」
「魔法の杖のような、何か良い節税方法はないですか?」
という質問を受けることが多々あります。
おそらく、ネットの広告やYouTubeなどでの、
「副業で3,000万円実現!」
「目から鱗!節税不動産商品」
「サラリーマンでもできる節税」
などというバズるような謳い文句に目を奪われている方も多いのではないでしょうか?
結論からすると、保険商品の節税効果の低減、海外不動産投資の減価償却方法として定額法の採用、タワーマンション税制などの国税庁のメスが入り、節税に制限がかかり、ほとんど余地がないものの、確かにまだ節税となることはあります。
ただし、投資時や実行時の取得価格やタイミングにその成否が依存することが多いです。
また、それらの商品を取扱う会社などが、本当に顧客のことを第一に考えて営業している会社だけではないため、スキーム全体の考察と全期間における想定をして、リスクとリターンを考える必要があります。
そこで今回は、富裕層の資産運用と税金対策について、よく質問される項目について、筆者の思うところを主観的にはなりますが、そのポイントについて説明していきます。
資産運用方法としては、主には、預金、株式、債券、不動産、保険商品、現物資産、暗号資産などがあります。
それぞれについて、流動性、リスク、リターンには差があり、手元流動性を維持しながら、リターンを追求できるように、バランス良く配分することが良いとされています。
などで大別されるかと思います。
区分 | 国内/海外 | 流動性 | リスク | リターン | |
普通預金 | 普通預金 | 国内 | ◎ | Low | Low |
海外 | 〇 | Middle | Low | ||
定期預金 | 定期預金 | 国内 | ○ | Low | Low |
海外 | ○ | Middle | Middle | ||
株式 | 上場企業 | 国内 | ◎ | High | High |
海外 | ◎ | High | High | ||
非上場企業 | 国内 | × | High | High | |
海外 | × | High | High | ||
債券 | 国債 | 国内 | 〇 | Middle | Low |
海外 | 〇 | Middle | Middle | ||
事業会社債 | 国内 | △ | Middle | Low | |
海外 | △ | Middle | Middle | ||
不動産 | マンション・ビル | 国内 | △ | Middle | Low |
海外 | △ | Middle | Low | ||
戸建 | 国内 | × | Middle | Low | |
海外 | × | Middle | Low | ||
保険商品 | 円建 | △ | Low | Low | |
外貨建 | △ | Middle | Middle | ||
現物資産 | 金など | △ | Middle | Middle | |
暗号資産 | ビットコインなど | High | High |
富裕層については、ヘッジファンドへの投資、オフショア外貨建生命保険などで運用されることも多く見受けられ、日本から海外へと資金が流れることもあり、税務署も税務調査などにおいては、注意深く見ています。一定金額以上の国境を越えたボーダーレスの資金移動について、税関等を通して、税務署などと情報共有していることによります。
特に、ケイマン諸島、バージン諸島、シンガポール、香港、ルクセンブルグなどの名称が出てくる場合には、課税回避スキームであることも多いため、課税リスクが高まることから、注意が必要です。
現行税制における税務対策の大きなものは、いわゆる、ここ数年で、保険商品、タワマン税制が狙い撃ちされ、使うことができなくなりました。
まだ、小規模宅地等の評価減、家なき子税制などが活用できます。
また、株式、ゴルフ会員権、不動産については、相続時などにおいては、財産評価基本通達における評価が採用され、時価よりも低く評価されることが多いため、節税という観点では、現金預金で財産を保有しているより、有利となります。
いわゆる、節税商品として、個人・法人問わず、利用されているものとしては、レバレッジリース、中古不動産などがあります。
航空機、船舶、コンテナ、トラック、コインランドリー
などを投資の対象としているリース取引になります。
投資初段階においては、一括費用処理、定額法、定率法などによる減価償却費による税の繰延べを行うと共に、一定の運用収益をあげる取引です。
ただし、投資後半においては、減価償却の終わった投資対象を売却して総投資額を上回る総リターン額をあげるため、売却益が発生することになります。
こちらの投資商品は、節税というよりは、税の繰延べ、低収益の金融商品であることが多いかと思われます。
稀に、総投資額に満たない総リターン額しかあがらない節税商品やポンジースキームによる投資詐欺もあるため、投資段階において、投資スキームを正しく理解する必要があります。
中古の一棟アパートやマンションなどへの投資を行い、定額法の減価償却費を計上することにより、特に個人の所得税に関してその効果は高いですが、
所得税率45%(+住民税10%=Max55%)となる個人の所得を圧縮するとともに、5~8年程度の賃貸収入を得た後に、他社に売却し、減価償却費後の帳簿価額との差額は不動産売却益として、長期分離譲渡所得課税15.315%(+住民税5%=20.315%)の適用を受けることになります。
両者の差額は、35%程度であり、税金を含めた形であれば、対象不動産の売却価格が肝となりますが、プラスになることが多いです。
法人あれば、法人税等で概ね35%程度の課税ですが、長期分離譲渡所得課税では低税率であり、結果として、税率差異により、納税は少なくなります。
また、これらの中古不動産を投資対象の金融商品と取り扱っている投資不動産会社に、社内ルールで、土地と建物の時価の概算を
としていることが見受けられます。
まず、取引価格における償却固定資産の比率を最大化し、さらに、耐用年数が比較的短いとう想定される建物附属設備にも比率を寄せることにより、節税を最大化できるようなロジックとなっているようです。
これについては、投資不動産会社の提案資料などには、「税金の取扱いについては、顧問税理士等にご確認ください。」などと記載がありますが、課税当局から否認されている事例を出ているので、固定資産税評価明細書などにより、合理性を別途検討する必要があります。
最近、不動産の利回り計算などの提案資料を拝見することが多いですが、その中で、建築価格が高騰している影響なのか、土地の時価を考慮せず、建物だけで利回り及びキャッシュ・フローが一見、プラスになっている計算シートを見ることがあります。
超大手企業ですが、一般消費者は結構儲かるねといって、投資を検討していることがありました。
騙されないように・・・
富裕層の資産運用と税金対策において知っておいていただきたいポイントについて簡単に説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。資産運用や税金対策に課題感を御持ちの方・もう少し詳しく知りたい方はぜひ当会計事務所へお問い合わせください。