法人の消費税等(以下、「消費税」という。)の納税義務の判定は、その課税期間の基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下であるか否かで判定します。
1,000万円超の場合は課税事業者・1,000万円以下の場合は免税事業者となります。したがって、設立1期目と2期目の法人は基準期間がないので、原則として消費税の納税義務が免除されます。
しかし、一定の要件に該当する場合は設立1期目と2期目でも消費税の課税事業者となることがあるので、留意が必要です。
今回はどのような場合に、設立1期目と2期目の法人が消費税の課税事業者になるのかについて説明していきます。
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事業年度開始の日が基準となります。例えば、資本金500万円で設立し、1期目の途中で500万円増資をして、資本金1,000万円となった法人の場合は、1期目は消費税の免税事業者となり、2期目は消費税の課税事業者となります。
消費税については、比較的実質的に判断する法人税と異なり、形式面を重視することから、このようなルールとなっています。これは、法人税法第132条の包括否認規定に相当する条文が、消費税法には定められていないことからも窺えます。
ただし、明らかに租税回避のみを目的とする場合などにおいては、条文改正なども行われることも可能性としては少なからず、あり得ることかもしれません。
特定期間とは、課税事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間のことを意味します。
例えば、2020年6月1日に資本金500万円で設立した場合を想定してみます。
1期目の事業年度は2020年6月1日から2021年3月31日の10ヶ月決算、2期目の事業年度は2021年4月1日から2022年3月31日となりますが、1期目の6月1日から11月30日までの課税売上高が1,000万円超であり、かつ、給与等の支払額が1,000万円超である場合は、1期目は消費税の免税事業者となりますが、2期目は消費税の課税事業者となります。
特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人のうち、次の1、2のいずれにも該当する法人です。
なお、新規設立法人とは、その事業年度の基準期間がない法人で、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満の法人を意味します。
例えば、課税売上高が毎期5億円を超えている法人が、資本金500万円で株式51%を出資して子会社を設立した場合は設立1期目も2期目も消費税の課税事業者となります。上場会社や比較的規模の大きな会社が、子会社を設立する場合には、消費税の免税の取扱いとはならないことに留意が必要です。
法人税においては、100%支配関係があるか否かで判定することが多いですが、消費税については、過半数が一つの基準となっていることに特徴があるかと思います。
設立3期目以降は、資本金の額(ケース①)や特定新規設立法人(ケース③)に該当するか否かは関係なく、基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下であるか否かにより、消費税の納税義務を判定します。
ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円超であり、かつ、特定期間の給与等の支払額が1,000万円超(ケース②)である場合は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の課税事業者となります。
基準期間が1年に満たない場合には、12ヶ月相当に換算した金額により判定します。
例えば、設立1期目が期間8ヶ月で課税売上高800万円であった場合は、1期目の課税売上高は1,200万円として判定します。
したがって、1期目を基準期間として消費税の納税義務の判定を行う3期目は、基準期間における課税売上高が1,000万円超となるため、消費税の課税事業者となります。
消費税においては、毎年のように税制改正がされており、巷で節税策と言われるものは徐々に排斥されていますが、今回は、設立1期目と2期目の消費税納税義務判定について説明させていただきました。
一定規模の法人が子会社を設立する場合は、資本金額や出資の比率等により、1期目から消費税の課税事業者になることもあり得るということがお分かりいただけたかと思います。
消費税の免税事業者になることを企図して子会社を設立する場合もありますが、企業再編スキームも含め、事前にしっかり確認をしていただければと思います。もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ当会計事務所へお問合わせください。